国際熱核融合実験炉ITERにおいては,現状で最も高パフォーマンスを示しているトカマク型装置が採用され,核燃焼プラズマの実証が目指されている.一方で,プラズマ電流の制御を必須とするトカマク型と比較し,閉じ込め磁場を外部コイルのみによって形成するヘリカル型装置は定常運転が容易であり,将来の発電炉としてより優位である.
現在,ヘリカル型の装置研究において,先進ヘリカルと呼ばれる磁場配位の最適化研究が行われている.準軸対称,準ヘリカル対称,準ポロイダル対象,準等磁場等の概念に準じた最適化により,トカマク型装置に比肩する閉じ込め性能と定常運転を両立する新たな磁場配位を実現出来る可能性がある.京都大学ヘリオトロンJ
装置は,ヘリカル軸ヘリオトロン配位を実現している最適化された先進ヘリカルの一つである.等磁場配位が形成され,ミラー磁場を制御して捕捉粒子を磁場が比較的一様なトーラス直線部に偏在させることで捕捉粒子の損失を低減し,新古典輸送の改善が狙われている.
将来的には,先進ヘリカル研究において,粒子軌道のみならず,定常的輸送を決定している乱流輸送についても最適化を目指す必要がある.近年,計測手段及び解析手法の進歩や某大な容量の乱流計測データの解析に必要とされる計算機の処理速度の向上により,乱流の理解は大きく進展してきている.先進ヘリカル装置においても,乱流とそれによる輸送過程を明らかにして閉じ込めとの関係を解明することは重要であり,今後の磁場閉じ込め核融合研究において高く意義づけられる.
本研究は,「先進ヘリカル磁場配位における高性能プラズマの実現」を最終的な目標とする.その実現の為,以下に述べる様に段階的に目標を設定し,研究を進める.初期の段階では,ヘリオトロンJ装置における計測器の充実を目標として,効率的な既存計測器の運用を目指して改良・改造に取り組み,また,新規に揺動計測器を導入し,より質の高い実験の体制を構築する.複数の計測器を連携し,相補的に用いて,プラズマ内部現象の時間的空間的構造を総合的に調べることが可能な実験環境の構築を目指す.
次に,ヘリオトロンJ装置における乱流の基本的特性を調べ,更にはその磁場配位依存性,閉じ込め改善モードとの相関について詳細な解析を行うことで,乱流と閉じ込めの統一的理解を目指す.これは,先進ヘリカル磁場装置における核融合工学の観点から重要であるばかりでなく,乱流という非線形現象の実験的検証という物理学的観点からも重要である.
最終的に,上記で得られた知見をもとに,乱流輸送においても優れた閉じ込めを実現する実験条件を探索し,最終目標である高性能プラズマの実現を狙う.これによって,磁場閉じ込め核融合研究における先進ヘリカルの優位性を示し,ヘリカル型装置の可能性と将来展望を示すことを目標とする.